「ULTRA-TRAIL Mt.FUJI(ウルトラトレイル・マウントフジ)」の頭文字を取って「UTMF(ユーティーエムエフ)」と呼びます。
UTMFは、山梨県と静岡県をまたいで開催されるトレイルランの100マイル(およそ165.3km)レース。富士山を上り下りするのではなく、周辺エリアを走るコースレイアウトになっています。制限時間は44時間。
2012年にスタートし、国内のみならず海外のトップ選手をも魅了してきたUTMF。実は、世界的に有名なUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)の姉妹レースという位置付けになっています。
多くのトレイルランナーが一度は走ってみたいと憧れるUTMF。どうして人は、160kmもの距離を走ろうとするのか。しかもトレイルを。そう思うのも理解できます。
そこで、トレイルランナーがUTMFを目指す理由を、個人的な想いも込みでご紹介いたします。
UTMFとは
UTMFは、2012年から続くトレイルランの人気レース。山梨県と静岡県をまたいで100マイル走ります。実行委員長は世界で活躍し日本にトレランを広めたレジェンドの1人、鏑木 毅(かぶらき つよし)さん。
これまで、開催時期の変更やコースレイアウトの見なおし、同時開催していた「STY(およそ80km)」の廃止および「KAI(69km)」の開催など紆余曲折を経て今に至ります。
2017年は、開催時期変更に伴う準備・調整不足で開催見送り。2020年・2021年は、新型コロナウィルスの影響を受けて中止になっています。そんな経験もしつつ、2,000人以上が走るレースへと規模を拡大しています。
海外のトップ選手が集まることでも有名で、ウルトラトレイル・ワールドツアーの1つにもなっています。注目度の高さから、NHKのBS1で放送されている「グレートレース」で特集されることも。
そんなUTMF、完走するのはもちろんですがエントリーするだけでも大変。それだけに、トレイルランナーが憧れるレースとなっています。きびしい参加条件など概要(2022年を参照)については以下になります。
きびしい参加条件がある
トレイルランナー憧れのレースのため、抽選に当選しなければならないのはきびしい条件の1つ。他にも、100マイルを走るための体力と走力、レースマネジメントやリスクマネジメント能力があることも条件になります。
中でもきびしいのが、ITRAポイントの規定。ITRAとは国際トレイルランニング協会のこと。ITRAポイントとは、ITRA認定のレースに付与されるポイントを意味します。
UTMFの場合、10ポイント以上が参加条件になります。しかも、一般エントリー開始日の2年前から前日までにITRA認定のレースに出場・完走しポイントを獲得することとなっています。
さらに、最大3レースで10ポイント以上獲得すること。そのうち、最低1レースはエントリー開始の1年前から前日までに開催されるレースとする。となっています。
ITRAポイントは、コースの累積標高差や距離によって決まります。ちなみに僕が先日走った「比叡山トレイルラン」ですと、50kmの部で3ポイント、50マイル(およそ80km)の部で4ポイントとなっています。
つまり、エントリー開始日の2年以内に50km程度のレースを2本と80km程度のレース1本を完走していること。その内1本は、エントリー開始日の1年以内であることが条件になってきます。
UTMFは160km超のロングレースになります。安全面も考慮して、経験値が問われるということですね。
エントリー費もなかなかきびしい
気になるエントリー費ですが、40,000円(決済手数料別途 = エントリー料の5.5%)とかなりのもの。軽いノリで出られるレースではない理由がここにもあります。
完走率はこんな感じ
大雨の影響を受けた2015年大会で、41.5%。2016年は更なる雨の影響でコースが49kmに短縮されて、97.0%。2019年は荒天のためレースが途中で中止。それまでにゴールしたのは91人で、3.7%でした。
と、イレギュラーはありますが平均するとおよそ63%になります。ちなみに、過去の完走率はこんな感じ。
開催年月日 | ステータス | 完走率 |
---|---|---|
2012年5月18〜20日 | 611人完走/852人出走 | 71.7% |
2013年4月26〜28日 | 726人完走/991人出走 | 73.2% |
2014年4月25〜27日 | 849人完走/1,422人出走 | 59.7% |
2015年9月25〜27日 | 567人完走/1,363人出走 | 41.5% |
2016年9月23〜25日 | 1,343人完走/1,384人出走(49kmに短縮) | 97.0% |
2017年 | 開催見送り | – |
2018年4月27〜29日 | 1,480人完走/1,580人出走 | 72.8% |
2019年4月26〜28日 | 91人完走/2,450人出走 | 3.7% |
2020年4月24〜26日 | 中止 | – |
2021年4月23〜25日 | 中止 | – |
2022年4月22〜24日 | 1,470人完走/1,808人出走 | 81.3% |
必携品について
必携品とは、必ず携帯しておかないといけないもの。公式が定める必携品リストです。
- 詳細コースマップ(紙製の地図を携帯すること)
- 携帯電話
- 携帯コップ(150cc以上)
- 水(1ℓ以上)
- 食料
- ヘッドライト(2個)+それぞれの予備電池
- 点滅ライト
- サバイバルブランケット(130cm以上×200cm以上)またはエマージェンシーヴィヴィ
- ホイッスル
- テーピング用テープ(80cm以上×3cm以上)
- 携帯トイレ
- フード付きレインジャケットとレインパンツ(防水・透湿機能を持ち、縫い目をシームテープで防水加工してあるもの)
- 長袖シャツ(綿素材は認められません)
- 足首までを覆うズボンあるいはタイツまたは膝までを覆うタイツと膝までを覆うハイソックスの組み合わせ(綿素材は認められません)
- 手袋、耳までを隠す帽子
- 鼻と口を覆い飛沫拡散を防止できるマスク2枚(布製の場合、2層以上のもの)
- ファーストエイドキット(絆創膏、消毒薬など)
- 保険証(コピーは不可)
- 配布されるナンバーカード、ICタグ
- 必携品を収納できるザック・パック
他にもあるといい携帯品についてはこんな感じ。
- トレイルランニングシューズ
- コンパス
- 熊鈴
- 着替え
- 日焼け止め
- ワセリン
- 筆記用具
- 現金
- 消毒用の除菌ティッシュやアルコールスプレーなど
上記に合わせて、必要なものを携帯してレースに臨みます。
獲得標高
+ 7,573メートル/- 7,613メートル
コースマップ
2022年大会は、トレイルのコンディションや大会前日の午後から深夜にかけて相当量の降雨が見込まれたため、天子山地を通らずに迂回路を通過するコースに変更されました。
関門時刻
チェックポイント | 距離 | IN | OUT |
---|---|---|---|
U1:富士宮 | 21.5km | 22日/20:20 | 22日/20:30 |
U2:麓 | 50.6km | 23日/4:50 | 23日/5:00 |
U3:身延町本栖湖 | 61.1km | 23日/8:50 | 23日/9:00 |
U4:富士河口湖町精進湖 | 73.0km | 23日/13:20 | 23日/13:30 |
U5:富士急ハイランド | 95.7km | 23日/14:20 | 23日/14:30 |
U6:忍野 | 115.1km | 23日/19:50 | 23日/20:00 |
U7:山中湖きらら | 124.0km | 23日/22:50 | 23日/23:00 |
U8:二十曲峠 | 137.6km | – | 24日/3:30 |
U9:富士吉田 | 149.8km | 24日/6:50 | 24日/7:00 |
FINISH:富士急ハイランド | 165.3km | 24日/11:30 | – |
UTMFの魅力。トレイルランナーが目指す理由
国内で100マイルもしくはそれ以上の距離を走るトレランレースは、UTMF以外にもあります。数は多くはないですけどね。その中でもっとも知名度と人気があるのが、UTMF。そう言ってしまっても間違いないでしょう。
富士山周辺が舞台。コースをプロデュースしてるのが鏑木さん。絶対に楽はさせてくれないでしょう(笑) と分かってはいるものの、そこに2,000人以上のトレイルランナーが集まりゴールを目指す。
トレイルランにすら冷ややかな視線を送る人からすれば、これは狂気の祭典。でも、トレイルランナーからするとこれがイイッ! キツいと分かっているからこそ目指したくなるのは、性(さが)です。
トレイルランは上下移動が激しく、ロードのレース以上にキツいです。たとえ20kmのレースだとしても、スタートしてからゴールするまで走りっぱなしだなんてトップ選手でもないかぎりムリ。
それでも頑張ってゴールすると、ハンパない達成感や多幸感が得られます。アップデートした自分になれる。孫悟空が精神と時の部屋で修行した後のように。そう思っているのは僕がバグってるわけではないハズ。
一度、そんな体験をしてしまったトレイルランナーはどうなるか。もっと欲しがってさらにキツいレースを求めてしまう。その行き着いた先にあるのが、UTMFです。
まとめ
トレイルランナーだったら一度は走ってみたい、UTMF。魅力とトレイルランナーが目指す理由についてご紹介しましたが、ひいてませんか? 大丈夫でしょうか(汗)
過酷なイメージはありますが、ロード区間もそれなりにあるので安心できます。いざというとき、リタイヤしやすいですからね。それと、エイドも充実しているので途中で補給できるのも助かります。
しっかりした運営体制が敷かれているからこそ、多くのトレイルランナーを魅了するUTMF。大規模なレースだけにコロナ禍での運営はむずかしいこともあると思いますが、来年以降も開催してほしいです。
2023年、もし開催されるようでしたら僕も走ってみたいです。そこに向けて動きはじめてます。取り組みについては別の記事で紹介させてください。目指している人がいたら、同じ舞台で走りましょう!